遺言書が無効?

コラム遺言


こんにちは。行政書士の中川です。
今回は、自分で書く遺言書「自筆証書遺言」が無効になってしまうパターンをいくつかご紹介します。

弊所でお勧めしている「公正証書遺言」は、公証役場の公証人が作成する法的効力が担保されている遺言書ですが、費用がかかったり、公証役場まで出向く必要があったりで手間がかかります。一方で、自分自身で全て作成する「自筆証書遺言」というものも存在します。自筆証書遺言は、どこにも出向く必要はありませんし、費用も紙とペン、あとは封筒代ぐらいのもんでしょうか、ほとんどかかりません。このいいことずくめのような自筆証書遺言ですが、意外と作成ルールが厳しく、注意して作成しないと遺言書そのものが法的に無効、つまり「最初からなかったもの」として扱われてしまいます。

無効のパターンその1:「自筆」していない

「自筆証書遺言」というぐらいですから、全部直筆で書かないといけません。パソコンなどで印字したものも無効です。今時ちょっと面倒ですが、筆跡によって本人が書いたものと推定するために必要とされています。最後に署名押印も必要ですが、もちろん、氏名もスタンプなどではだめです。必ず自署してくださいね。

 

無効のパターンその2:遺言書の作成年月日が書いていない

遺言書が複数出てきた場合、日付の新しい遺言書が有効となります。また、遺言者が亡くなるとき、多くはご高齢なので、重い認知症を患っていたというケースも少なくありません。遺言書は、本人が正常な意志で残したものでなければ無効なので、そんなとき「いつ書いた遺言書なのか」つまり、重い認知症を患う前に書いたのか、あるいは認知症を発症していたが軽度であったかが重要な要素になってきたりします。

なお、年月のみで日付がないもの、「平成○○年1月吉日」なども無効です。一方で、「平成○○年元旦」や「○○歳の誕生日」などの書き方であれば年月日が特定できるので問題ありません。

 

無効のパターンその3:訂正のルール

書き間違えたところの訂正や加筆にもルールがあります。しかも一般的な文書よりも厳格なルールが定められていて、たとえば「二重線で打ち消して訂正印」だけでは訂正の効力はありません。

民法968条2項
自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない

つまり、二重線・訂正印に加え、欄外に「○○行目に何文字追加、追加した文字○および○」や「何行目○○文字削除、削除した文字○」など具体的な訂正内容を記載する必要があるということです。もうこうなってくると、個人的には間違えたら全部最初から書き直しのほうがすっきりしそうです。

なお、上記の方法に従っていなかったとしても、遺言書そのものの効力には影響なく、訂正や加筆についてのみ無効の扱いとなります。

 

無効のパターンその4:あいまいな財産の特定方法

遺言書が家族にあてられたものであればなおさらですが、家や土地について普通は「自宅」とか「自宅の土地」などの言い方で十分伝わりますよね。何か付け加えても住所を付記するぐらいでしょうか。ところが、これも無効になってしまう可能性があります。遺言書は「誰が見ても明らかにわかる」必要があるからです。遺言書をあてた人たちがわかれば良いというわけでははないんですね。

不動産の場合であれば、登記簿に記載されている所在、地番、地目、地積、家屋番号、構造、床面積を正確に記載します。住所(住居表示)は同じ住所が複数存在することがあるので土地は地番、建物は家屋番号で特定する必要があります。預金の場合も、金融機関、口座種別、口座番号の他に、誰に何割、誰に何割といった分割する際の割合まで記載しないと、これまたあいまいであると判断されかねませんし、何より揉め事につながってしまいます。

 

番外:自筆証書遺言書(らしきもの)を発見したら?

大きく「遺言書」と書かれた、固く封がされた封筒が見つかったら一刻も早く内容を確認したくなるのが人間の性ですよね。でも、ここはぐっと我慢。自筆証書遺言を最初に開けるのは「家庭裁判所」と法律に定められているからです。

民法第1004条3項
封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

みんなが見ている前で裁判所が開封することで、遺言書の内容が間違いなく遺言者が書いたものであり、偽造変造がされていないことを確認するんですね。なので、遺言書の内容が適法であるか、有効・無効かの判断をこの場で行うわけではありません。

また、思わず開けてしまった場合も、上述した証拠保全的な手続きを経ていないという背景を背負ってはしまいますが、それによって遺言書が無効になるというわけではありません。ただ・・・。

民法第1005条
前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。

なんと、罰則もあるのでやっぱり検認は受けておいたほうが良さそうです。

以上、自筆証書遺言についてあれやこれや書きました。
法的効力を担保するが手続きが煩雑な公正証書遺言、手軽だが様式が厳格な自筆証書遺言。一長一短がありますが、あなたならどちらを選びますか?

弊所では面倒な公正証書遺言作成のお手伝いをしています。よろしければこちらもご覧ください。

ではまた次回!

 

 

 

 

Posted by Kentaro Nakagawa